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財務DDとは?その手順とよくある失敗事例潜在的なリスクを解説

M&Aによる事業拡大を目指す際、買収対象企業の価値を正しく見極めることは成功の絶対条件です。しかし、財務諸表の数字だけを信じてしまうと、後から簿外債務や過大在庫といった「隠れたリスク」が発覚し、深刻な損失につながるケースも少なくありません。

本記事では、こうした事態を未然に防ぎ、M&Aを成功に導くための不可欠な調査である「財務デューデリジェンス(財務DD)」について、その目的と重要性、具体的な調査項目から円滑に進めるためのコツまでを網羅的に解説します。

財務DDとは?目的と重要性

M&Aにおいて財務デューデリジェンス(以下「財務DD」いいます。)とは、買収対象企業の財務状況を正確に把握するための重要な調査です。財務諸表や帳簿上の数値が正しいかを検証し、簿外債務(帳簿に記載されていない負債)や粉飾決算といった重大な問題の有無を確認します。

財務DDを適切に実施することで、買収側企業の将来的な損失を未然に防ぐことにつながるとともに、企業価値を正しく評価できます。特に初めてM&Aに臨む経営者や担当者にとっては、財務DDは安心して取引を進めるための“保険”ともいえる存在です。

財務DDの実施手順と社内準備体制

M&Aにおける財務DDは、限られた期間で大量の資料を精査します。そのため、あらかじめ流れを把握し、社内の体制を整えておくことが重要となります。手順を把握していないと、必要な資料の収集が間に合わず、調査の精度やスケジュールに影響を及ぼす恐れがあります。

(1)実施フローと期間の目安

財務DDの流れは、一般的に次のようなステップで進みます。

  1. 事前打合せ:調査範囲やスケジュールの確認
  2. 資料準備・提出:決算書、試算表、契約書、在庫表などを収集
  3. 調査・分析:提出資料やヒアリングをもとに財務状況を精査
  4. 報告書作成:調査結果とリスクの指摘、改善提案をまとめる

期間は企業規模や取引条件によって異なりますが、中小企業では2~4週間程度を一応の目安としておくのがいいでしょう。

(2)社内準備と担当者の役割

スムーズな財務DDのためには、社内での役割分担が不可欠です。

  • 経理担当者:財務諸表や帳簿、補助簿など必要書類の準備
  • 総務・法務担当者:契約書、登記簿、労務関連資料の提供
  • 経営陣:事業計画や戦略に関する説明、重要意思決定のサポート

また、提出する資料は内容の正確性が求められるため、事前に実態との整合性のチェックを行い、不明点は早めに担当者間で共有してください。

財務DDのチェック項目

財務DDは、対象企業の財務状況を多角的に分析し、取引後のリスクを明らかにすることが目的です。そのため、調査項目は多岐に渡り、全体像を事前に把握しておくことで効率的かつ漏れのない対応が可能になります。以下は、代表的なチェック項目です。

(1)資産・負債のチェック項目

  • 現預金の残高と銀行残高証明の照合
  • 売掛金・貸付金の回収可能性(回収が滞留している債権の有無)
  • 棚卸資産の評価方法と実在性(過大在庫や陳腐化の確認)
  • 固定資産の登記や所有権の確認
  • 借入金の契約条件・返済スケジュールの確認
  • 未払費用や保証債務など帳簿外の債務有無

(2)収益・費用のチェック項目

  • 売上計上基準と実績(前期比・月次推移の分析)
  • 主力取引先の売上割合や依存度
  • 変動費・固定費の内訳と変動傾向
  • 異常値や一時的収益・費用の有無
  • 税務申告内容との整合性
  • 取引先との覚書や裏契約の存在
  • 売上や在庫の架空計上、経費の過少計上など粉飾の兆候

(3)その他のチェック項目

  • 過去の会計方針変更や修正仕訳の内容
  • 関連会社取引の実態と価格の妥当性

財務DDで生じ得る潜在的リスク

財務DDを不適切なやり方で行った場合、買収後に想定外の問題が表面化することがあります。以下では、このような場合に起こり得るリスクと、その背景にある原因を紹介します。

(1)チェック漏れによるリスク

  • 滞留債権の見落とし:売掛金の回収可能性を十分に検証せず、買収後に回収不能が判明し多額の損失を計上するリスク。
  • 固定資産の評価の妥当性の検証:設備や土地の評価額が実際より高く見積もられており、減損損失を計上することになるリスク。
  • 契約上の債務未確認:保証契約が帳簿に反映されておらず、買収後に債務として負担が生じるリスク。

(2)発生しやすい典型的な問題

  • 過大在庫:在庫の評価方法が実態に合わず、実際には陳腐化や不良在庫が多い。
  • 簿外債務:帳簿に記載されない未払金や保証債務、損害賠償リスクの存在。
  • 粉飾決算:売上の架空計上や費用の先送りなど、財務諸表の信頼性を損なう行為。
  • 過度な取引先依存:一部の顧客に売上の大半を依存しており、取引解消時の収益悪化リスクが高い。

財務DDを円滑に進めるコツと専門家の活用

財務DDは短期間で多くの資料を精査するため、準備不足や対応の遅れが調査品質や交渉結果に直結します。効率よく進めるためには、事前準備と外部リソースの活用が不可欠です。

(1)実務で押さえたい注意点

  • 早期準備:財務諸表や契約書類などの主要資料は、普段から整備しておく。
  • 情報の一元管理:調査資料を関係者間で共有できるフォルダやデータルームを活用する。
  • 不明点の即時対応:調査側からの質問や追加依頼には迅速に回答し、調査の停滞を防ぐ。
  • 内部コミュニケーション:経理・総務・経営陣の間で調査状況を共有し、対応の抜け漏れを防ぐ。

(2)専門家へ依頼するメリット

  • 調査精度の向上:公認会計士のような専門知識を持つ人材が、決算書や契約内容を深く分析。
  • リスクの早期発見:過去の事例も踏まえて潜在的なリスクを早期に特定できる。
  • 交渉力の強化:財務DDの報告書をもとに、買収価格や契約条件の交渉を有利に進められる。

(3)M&A交渉におけるDD結果の活用

財務DDで明らかになった財務リスクや改善点は、そのまま交渉材料となります。例えば簿外債務が判明した場合、買収価格の引き下げや保証条項の設定が可能です。逆に財務状況が想定より良好であれば、取引の信頼性向上につながります。

財務DDに関するFAQ

Q: 財務DDにはどのくらいの期間がかかりますか?
A: 中小企業の場合、通常2〜4週間程度です。企業規模や提出資料の準備状況によって短縮や延長があります。規模が大きい場合や資料が多い場合は1〜2か月かかることもあります。

Q: 財務DDで特に重要な確認項目は何ですか?
A: 資産・負債の確認、収益・費用の分析、簿外債務や粉飾決算の有無が重要です。特に売掛金の回収可能性や在庫評価は、将来の損失防止に直結します。

Q: 財務DDでよくある失敗にはどんなものがありますか?
A: 滞留債権や簿外債務の見落とし、固定資産の過大評価、契約上の債務未確認などが挙げられます。事前に調査項目を明確にし、担当者間で共有することが防止策になります。

Q: 財務DDは誰に依頼するのが良いですか?
A: 公認会計士など、財務調査の経験が豊富な専門家に依頼するのがおすすめです。実務経験に基づく分析力と、リスク発見の精度が高まります。

Q: 財務DDの結果はM&A交渉にどう活用できますか?
A: 発見されたリスクをもとに買収価格の調整や契約条件の見直しが可能です。逆に財務状況が良好であれば、交渉での信頼性向上や条件改善につながります。

まとめ

M&Aの成否は、買収対象企業の財務リスクを正確に見抜けるかにかかっています。そのための不可欠な調査が「財務デューデリジェンス(財務DD)」です。

財務DDの目的は、財務諸表に現れない簿外債務や粉飾決算といった「隠れたリスク」を発見し、買収後の想定外の損失を防ぐことにあります。これはM&Aにおける重要な「保険」と言えるでしょう。調査は短期間で行われるため、決算書などの資料を早期に準備し、社内が連携して迅速に対応する体制が成功の鍵となります。

さらに、公認会計士など専門家の知見を活用すれば、調査の精度は格段に向上します。また、発見されたリスクは買収価格や契約条件の交渉を有利に進めるための強力な材料となります。財務DDは、リスクを管理し戦略的な意思決定を下すための重要なプロセスなのです。

M&AやIPOを検討されている経営者の皆さまへ

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一般社団法人全国デューデリジェンス協会は、リスクの特定及び評価の実施、リスクに対する是正・予防・軽減措置等を通じて、企業のリスク管理をサポートします。