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介護現場におけるカスタマーハラスメント(カスハラ)について解説

介護業界は、高齢社会である現代において不可欠なサービスを提供する重要な産業です。しかし、その現場では介護職員がカスタマーハラスメント(以下「カスハラ」といいます。)に直面することが少なくありません。利用者やその家族からの暴言、暴力、過度な要求など、介護職員の心身の健康を脅かす行為は、深刻な人権問題であるとともに、企業の持続可能性にも関わる重大な経営課題です。

本記事では、介護現場におけるカスタマーハラスメントの実態、その対策の重要性、そして厚生労働省が公表している「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」に基づく効果的な対応策などについて解説します。

介護現場におけるカスハラの実態

介護現場におけるカスハラは、以下のような形で発生しています。カスハラは、介護サービスの利用者本人だけでなく、利用者の家族による行為により発生することもあります。

  1. 身体的暴力: 叩く、蹴る、物を投げつけるなどの行為
  2. 精神的暴力: 怒鳴る、脅す、人格を否定する言動、過剰なサービスの要求など
  3. セクシュアルハラスメント: 抱きしめる、必要もなく手や腕を触る、性的な話をするなど

カスハラが起こる背景

カスハラが生じる背景には、以下のような複数の要因が考えられます。

①サービスの特性: 介護は生活の根幹に関わる密接なサービスであり、利用者の身体の接触や、利用者宅への単身での訪問をする環境にあるという特性があります。

②認知症等の影響: 認知症や精神疾患により、本人の意思とは関係なく暴言や暴力が生じることがあります。

③介護負担とストレス: 家族の介護疲れやストレスが、介護職員への不満として表出することがあります。

④対応体制の不備: 企業側のカスハラへの対応体制が整っていないことで、問題が深刻化するケースも少なくありません。

介護現場におけるカスハラ対策の必要性

厚生労働省の調査によると、介護職員の離職理由の一つに「利用者との人間関係」が挙げられています。カスハラは、精神的なストレスや不安障害、対人関係への恐怖や仕事に対するモチベーション低下、離職率の増加といった深刻な結果を招く要因になります。

また、カスハラの中には、暴行罪、傷害罪、脅迫罪、強制わいせつ罪等の犯罪になりうる行為もあり、施設の運営にも大きな影響を与えるため、早期の対応が不可欠です。

介護現場が取るべきカスハラ対策

厚生労働省は、「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」を作成し、介護現場が取るべきカスハラ対策について周知しています。このマニュアルによる介護現場が取るべきカスハラ対策は概要以下のとおりとなります。

介護施設・事業所自身として取り組むべきこと

まずはカスハラに対する介護施設・事業所自身としての基本方針を決定し、職員に周知をします。その上で、カスハラを防止するためのマニュアルの作成、職員や利用者への周知、職員の相談窓口の設置などを行います。

職員に対して取り組むべきこと

職員に対しては、カスハラに対する介護施設・事業所自身としての基本的な考え方を分かりやすく伝えることが必要です。その上で、研修を通じて、具体的な対処方法を習得する機会を提供します。

関係者との連携に向けて取り組むべきこと

カスハラ対策は必ずしも介護施設・事業所だけで解決すべき問題ではありません。利用者の主治医や過去の利用施設などの関係者から情報を収集したり、弁護士や警察などへの相談をするなど、関係者と連携ができる体制を整えることも重要です。

まとめ

職場を守るために、できることから始めましょう。介護の現場は本来、利用者と職員が信頼関係を築きながら支え合う場所であるべきです。しかし現実には、職員を追い詰めるようなカスハラ行為が横行しているのも事実です。

カスハラは「我慢すべきもの」ではなく、「ハラスメント行為」であることを認識し、施設全体で対策を講じることが求められます。自分たちの職場を守るためにも、早めの情報収集と相談体制の整備を行いましょう。

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