• TOP
  • 事例を知る
  • 企業のサプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの取組みについて解説

企業のサプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの取組みについて解説

企業のサプライチェーンにおける人権デューデリジェンス の取組み

近年、SDGsやESGが注目を集める中、人権問題に対する企業の社会的責任の重要性が増しており、自社だけでなくサプライチェーン全体における対応が求められています。

欧州では、サプライチェーンも含めた企業の人権尊重の取組みに対する義務化されつつあり、サプライチェーン全体に対して企業が責任を負うことが世界的な標準となってきています。

本記事では、サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの重要性と実施方法について解説します。

サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの重要性

サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスの3つのリスクがあり、事例を入れて解説します。

オペレーショナルリスク

サプライチェーンにおけるオペレーショナルリスクは、主に製造過程、サービスの提供過程、調達先において生じる可能性があります。

サプライチェーン内で製品の製造過程やサービス提供過程、調達先において人権侵害が発覚した場合、顧客から取引停止のリスクがあるため、是正措置を講じる必要があります。

しかし、是正されない場合はサプライチェーンを再構築する必要があります。

オペレーショナルリスクが顕在化した具体例として、2013年にバングラデシュで発生した「ラナ・プラザ」工場崩壊事故があります。

この事故では1,134人が死亡し、2,500人以上が負傷する大惨事となりました。
事故の直接の原因は、違法な建物の増築による構造の脆弱性や、数千台のミシンや大型発電機の振動など、労働環境や建物の安全性が無視されていたことです。

多くの国際的なアパレルブランドがこの工場と取引をしていましたが、サプライチェーンに対する人権デューデリジェンスが不十分であったため、国際的な批判を受けました。

法務リスク

サプライチェーンでの人権侵害により、被害者から訴訟を受けるリスクがあります。
人権侵害に関する訴訟は長期間に渡ることが多く、訴訟コストが多額となります。

また、欧米では人権関連の法令が義務化していることから、欧米にサプライチェーンを展開している場合、法令違反し、罰金や課徴金が科せられるリスクがあります。

法務リスクが顕在化した具体例としては、2021年にネスレをはじめとする複数の企業が、児童労働や強制労働等を理由に訴訟を提起されました。

このケースは企業が自らのサプライチェーンにおける人権侵害に対して法的責任を負う可能性があることを示しました。

こうした訴訟は多額の賠償金や罰金が科せられる可能性があり、法的手続きが長期化することで、訴訟コストも増大します。

レピュテーションリスク

サプライチェーンでの人権侵害が世間に広く知れ渡った場合、企業イメージが悪化し、売上の減少や人材の採用難に繋がるおそれがあります。

レピュテーションリスクが顕在化した具体例としては、1997年にアパレルブランドのNIKEが委託していた東南アジアの工場において、児童労働や強制労働、低賃金労働などの人権侵害が明らかとなり、アメリカの学生グループを中心にNIKEの不買運動が展開されました。

人権デューデリジェンスを実施する上での注意点

サプライチェーンに対して人権デューデリジェンスを実施するには、以下の注意点を押さえることが必要です。

サプライチェーン全体の方針の策定

人権の尊重は、企業活動全体において実施するべきであり、企業が人権尊重の責任を果たすには、企業だけではなく、サプライチェーン全体での関与の必要があります。

cxそのため、企業のトップマネジメントはサプライチェーン全体に対し人権を尊重する明確な方針を策定することが必要です。

リスクの全体的な評価

サプライチェーン全体を精査し、具体的な人権リスクがないか、特定し評価します。
特に、リスクが高いとされる業種や地域に注意を払うことが重要です。

また、仮に人権侵害が起こった場合、どこまでの範囲に影響があるかを見極める必要があります。

ステークホルダーとの対話

企業の活動によって影響を受ける、取引先、従業員、顧客、サプライチェーン等のステークホルダーとの定期的な対話が必要です。

被害を受ける可能性がある人々の声を反映し、適切な対策を取ることが求められます。

継続的な実施

人権デューデリジェンスは一度だけではなく、継続的なプロセスとして実施されるべきです。

事業環境の変化や新たに発生する可能性があるリスクに対応するため、定期的にリスクの評価や対応策の見直しが必要です。

国・地域の固有事情の把握

グローバルに展開している企業の場合、サプライチェーンは様々な国や地域に渡っています。

国や地域ごとに人権リスクは異なりますので、現地の法制度や文化、社会情勢を考慮し、特有のリスクを把握する必要があります。

まとめ

サプライチェーンにおける人権デューデリジェンスは、企業の社会的責任を果たすために不可欠な要素です。

企業がこれらのステップをサプライチェーン全体に対して適切に実施することで、人権侵害のリスクを低減できます。

企業は法的規制や社会的要請が強まる中、サプライチェーン全体における人権問題に取組む必要があります。

M&AやIPOを検討されている経営者の皆さまへ

「人権DDとは何のために行うのか?」
「人権DDを行うことのメリット・デメリットを知りたい。」
「人権DDの具体的な方法を知りたい。」
「人権DDは誰に頼めばやってもらえるのか。」
といったお悩みのある方は、まずは一度ご相談ください。

一般社団法人 全国デューデリジェンス協会は人権リスクの特定及び評価の実施、リスクに対する是正・予防・軽減措置等を通じて、企業の人権リスク管理をサポートします。