はじめに
企業における人権意識は国際的に高まりつつあり、企業は単に業績を伸ばすだけではなく、様々な人権リスクに対処することが求められています。
人権リスクとは、企業や組織が事業を展開する際に発生する可能性のある人権に関する問題や負の影響を指し、これが実際に生じると企業に多額の損害を与えることがあります。
本記事では、国際的な動向に合わせて注目が高まっている人権リスクの内容について、具体例も交えつつ解説いたします。
人権リスクの概要
人権リスクとは、企業や組織が事業を展開する際に発生する可能性のある問題や負の影響を指します。
例えば、セクハラ、パワハラ等の職場で起こりうるハラスメント、個人情報の漏洩、賃金の未払い、労働安全衛生対策の不備、消費者の権利の侵害、環境問題などが挙げられます。
人権リスクが問題となる範囲
人権リスクは、企業や組織が直接人権侵害を引き起こすパターンのみならず、取引先の企業や組織に対して人権侵害を助長させるなど、サプライチェーンでの人権侵害が生じるパターンなどもあります。
人権リスクが生じた事例
2021年、日本の大手衣料品メーカーの製品が、ウイグル人への強制労働が疑われる中国の新疆ウイグル自治区の綿花で製造された可能性があるとして、アメリカが輸入を差し止めました
フランスにおいても、ウイグル人への人権侵害の問題について、日本の大手衣料品メーカーのフランス法人が捜査の対象となりました。
また、中国での人権侵害が国際社会で批判されたことを受け、日本の食品メーカーが新疆ウイグル自治区で生産されたトマト加工品の使用中止を発表しました。
人権リスクがもたらす損害
人権リスクは、企業にとって様々な悪影響があります。
まず、法令違反発生することによる罰金や損害賠償金を支払うことによるコストの増加が見込まれます。
また、企業の信用が失われることによるブランド価値の低下、競争力の低下が生じる可能性があります。
さらに、不買運動などによる売り上げの低下、外国からの輸入停止などによる経済的な損失は計り知れません。
人権リスクを回避するための手法
上記のように、人権リスクが現実化すると、企業の損害は多大なものになります。人権リスクを回避するためには、人権デューデリジェンスを行うことが不可欠です。
人権デューデリジェンスは、企業や組織がビジネス活動において潜在的な人権リスクを明らかにし、対策を講じるプロセスです。
これは国際的なガイドラインや規範に基づき、企業が社会的責任を果たす手段となっています。
おわりに
人権リスクの理解は、企業が社会的に持続可能なビジネスを展開するために不可欠です。また、人権に対するコミットメントは、企業の長期的な成功と社会的な影響を考える上で欠かせないものとなっています。
そのため、自社の人権リスクを人権デューデリジェンスによって的確に把握し、対策することが望ましいです。
この人権デューデリジェンスを具体的に進めていくには、多種多様な専門的知見を踏まえたうえで進めていくことが肝要です。
人権デューデリジェンスを行うことを検討される際は、専門家にご相談されることをおすすめします。