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強制労働とは?具体例とリスク・人権デューデリジェンスの必要性について解説

現代社会において、企業が果たすべき責任は、単なる利益追求にとどまりません。人権尊重は、企業の持続可能な成長に不可欠な要素となりつつあります。特に、強制労働は、人権侵害であるだけでなく、企業のブランドイメージを損ね、法的リスクをもたらす深刻な問題になっております。

本記事では、強制労働の定義、具体例、企業に及ぼすリスク、そして人権デューデリジェンスの重要性について解説します。さらに、企業が持続可能な経営を実現するために、人権デューデリジェンスを専門家に委託するメリットとデメリットについてもご紹介します。

強制労働とは

強制労働とは、暴力や脅迫等の手段を用い、労働者の自由な意思に反して労働を強いる行為を指します。国際労働機関(ILO)は、強制労働を、「ある者が処罰の脅威の下に強要され、かつ、右の者が自らの自由意思で申し出たものではない一切の労務」と定義しています。

すなわち、強制労働は、「処罰の脅威」の存在と「非自発的に行われる労働または役務」という2つの要素によって特徴づけられます。

強制労働の具体例

強制労働というと、劣悪な環境にある鉱山や農場などで、身体的暴力を背景として、厳しい肉体労働を強いられているようなイメージを持たれるかもしれません。

しかし、現代の国際基準での強制労働は、単に身体的な暴力に限らず、より広い意味で理解されています。

例えば、企業が外国人労働者からパスポート等の身分証明書を没収・保管したり、寮からの外出を許可制にしたりすることや、労働者が拒否できない状況下で時間外労働を強いることや、賃金の未払いは、労働者の退職の自由を制限するものとして強制労働とみなされる可能性があります。

強制労働が企業に及ぼすリスク

強制労働は、単に倫理的な問題に止まらず、企業の信用と経済的利益に深刻な影響を及ぼします。
強制労働に関連する問題が発覚すれば、企業は国際的な批判にさらされ、消費者や投資家からの信頼を失う可能性があります。

さらに、各国の法規制が厳格化されており、違反が確認されると法的制裁や罰金が課せられるリスクも高まっています。

企業が強制労働の防止に真摯に取り組まない限り、これらのリスクにさらされ続けることになります。

例えば、中国はウイグル人に対する強制労働等の人権侵害が疑われています。

その中で、日本の大手衣料品メーカーが新疆ウイグル自治区で栽培された綿花を使用している疑いがあるとして、アメリカから輸入差止めをされたり、フランス当局から捜査を受けたりするなどの影響が出る事態になりました。

人権デューデリジェンス(人権dd)の必要性

強制労働問題に適切に対処するためには、企業は自社のみならず、サプライチェーン全体でのリスク評価を行い、人権デューデリジェンスを徹底する必要があります。

人権デューデリジェンスとは、企業活動が人権に与える影響を評価し、違法行為や人権侵害の予防措置を講じるプロセスを指します。

人権デューデリジェンスの具体的な進め方については、以下の記事を参照ください。

https://ddkyoukai.com/knowhow/know-law/154/

企業に求められる持続可能な経営

消費者や投資家は、企業の社会的責任に対する期待を高めており、強制労働の撲滅に積極的に取り組む企業が選ばれる時代になっています。

持続可能な経営を実現するためには、単に規制を遵守するだけでなく、企業が自主的に高い倫理基準を設け、人権デューデリジェンスを実施することが重要です。

企業は、人権に関するリスク管理を徹底し、ステークホルダーに対して透明性のある取り組みを示すことで、信頼を獲得し、競争優位を確立することが可能です。

人権デューデリジェンスを専門家に依頼するメリット・デメリット

強制労働に関連するリスクは複雑であり、適切な対応を行うには専門知識が不可欠です。
専門家に人権デューデリジェンスを依頼することで、以下のメリットが得られます。

法的リスクの軽減:国内外の法規制に精通した専門家が適切な助言を行い、企業が法的義務を遵守できるようサポートします。

企業の信頼向上:人権問題に対する企業の取り組みを法的観点から評価し、ステークホルダーに対して透明性と誠実さを示すことができます。

専門的なリスク評価:強制労働に関するリスクは業界や地域によって異なります。
専門家は、企業の特性に応じたカスタマイズされたアドバイスを提供し、サプライチェーン全体のリスクを網羅的に評価することが可能です。

他方で、人権デューデリジェンスを専門家に依頼する以上、企業にとっては相応のコストがかかります。

しかし、強制労働に関連するリスクは複雑であり、自社でのリスク評価や対応のみでは限界があります。

そのため、相応のコストがかかるとしても、客観的、専門的視点をもった専門家に依頼するメリットは大きいです。

まとめ

経済のグローバル化が進む中で、強制労働に関連するリスクは年々増加しています。
企業が将来の法規制や市場の変動に備えるためには、今こそ人権デューデリジェンスを導入し、強制労働リスクに対する包括的な対応を取ることが必要です。

当協会では、加盟している全国の弁護士、公認会計士、税理士、社会保険労務士等の専門家をご紹介できますので、法的な助言を受けながら、企業が持続可能なビジネスモデルを構築するために、専門家によるサポートをぜひご検討ください。

M&AやIPOを検討されている経営者の皆さまへ

「人権DDとは何のために行うのか?」
「人権DDを行うことのメリット・デメリットを知りたい。」
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といったお悩みのある方は、まずは一度ご相談ください。

一般社団法人 全国デューデリジェンス協会は人権リスクの特定及び評価の実施、リスクに対する是正・予防・軽減措置等を通じて、企業の人権リスク管理をサポートします。